「研究って、めちゃくちゃ面白いんですよ」
浜松医科大学でAIと生命科学の融合領域を研究する松田和己(まつだ かずみ)氏。彼が起業家輩出プログラム「Passion Driven Changers(PDC)」で見出したのは、自身の内なる情熱を社会を変える力にする道筋だった。
「仲間が欲しい」という純粋な想いを原点に、日本の研究開発の未来を塗り替える壮大な構想を抱く彼の言葉に、耳を傾けてほしい。
■Mission / Vision / Value
PDCプログラムでは、まず徹底的な自己内省を通じて自身の根幹となるMission/Vision/Valueを明確にすることから始まります。このプロセスを経て、私が掲げたものは以下の通りです。
- Mission:研究・学問の力で、社会を変える
- Vision:「知」が「知」を創る社会へ
- Value:「知」は交わって初めて力になる
これらはPDCに参加する中で言語化され、現時点でも変わることはありません 。私の全ての活動の指針となるものです。
■自己紹介をお願いします
改めまして、松田 和己(まつだ かずき)と申します。現在は浜松医科大学に所属し、医学部で研究活動に勤しんでいます。出身は京都で、中高は「動物園みたいなところ」と表現するほど自由闊達な雰囲気の東大寺学園で過ごしました。最近ようやく「人間らしくなってきた」と冗談めかして話すこともありますが 、良くも悪くもそこで多様な才能に触れた経験が今の私を形作っています。
研究分野は、AI、生命科学、バイオインフォマティクスといった領域で、特にマウスを用いた動物実験なども行っています。また、少し変わったところでは、大学では冒険部の部長も務めていました。リーダーシップについては、「万人受けではないかもしれないが、一部には評価されている」といった自己評価です。
普段、敬語や標準語の相手と話すときはあまり出ませんが、地元の友人などと話す際は関西弁が強く出ます。言葉の使い分けは自然と身についたもので、ある意味バイリンガルなのかもしれません。
■なぜPDCに応募しようと思ったのですか?
PDCに応募した直接のきっかけは、浜松医科大学の知り合いの先生にスタートアップ支援の文脈で紹介されたことです。その先生が様々なビジネス系のプログラム情報を共有してくださる中で、PDCの名前を知りました。
しかし、その背景には、高校時代の親友の影響が大きいです。彼はアメリカに渡り(現在は帰国中)、教育系のビジネスをやりたいと熱く語っていました。彼と話すうちに、自分も研究という好きなことを通じて、ビジネスという形で社会変革に関われるのではないかという思いが芽生えてきました。
他の多くの起業支援プログラムがある中でPDCを選んだのは、率直に言うと「タイミング」と「名前がかっこよかったから」というのもあります。横文字が好きで、「Passion Driven Changers」という響きに惹かれたのは事実です。もちろん、それだけでなく、PDCが重視する「内省を通じた情熱の具現化」という点にも魅力を感じていました。自分の内なる想いを深く掘り下げ、それを事業という形にしていくプロセスに期待を寄せていました。
■PDCに参加して、自身にどんな変化や成長がありましたか?
PDCに参加して最も大きな変化であり成長は、「事業の進め方やツールの使い方といった『レシピ』を学べたこと」です。漠然と「こういうことをやりたい」というアイデアは以前から沢山持っていましたが、それをどう具体的に事業として形にしていくのか、その方法論をPDCのアクセラレーションプログラムの後半などで具体的に学ぶことができました。
また、プログラム期間中はアウトプットの機会が非常に多く、それが私にとっては思考を整理する上で非常に有効でした。元々、話すことで思考がまとまるタイプなので、多くの発表やディスカッションを通じて、自分が何に取り組んでいるのか、その意義や方向性がよりクリアになりました。研究の世界ではロジックを徹底的に突き詰められますが、PDCではそれに加えて「パッションをどう伝えるか」という視点が求められます。この経験は、相手に共感してもらい、巻き込んでいく上で非常に勉強になりました。
■現在、どんな事業を考えていますか?
現在私が中心的に考えている事業は、「博士学生と企業とのマッチング事業」です。具体的には、博士学生が持つ専門的なスキルや知見を、それを必要としている企業の案件(研究開発や課題解決など)に繋げるプラットフォームを構築します。
将来的には、これを単なる人材マッチングに留まらず、「共同研究のプラットフォーム構築」へと発展させていきたいと考えています。こちらが本丸であり、アカデミアと産業界がよりスムーズに連携し、新たなイノベーションを生み出す土壌を作りたいのです。
さらに個人的な興味としては、自身の研究成果の社会実装、例えば医療における動体検出技術による介護負担の軽減や、ディープラーニングを用いた検査技術の効率化などにも取り組んでみたいという思いがあります。しかし、まずは初手として、博士学生の雇用創出とマッチングプラットフォームの確立に注力していきます。
事業のロードマップとしては、マッチングシステムのプロトタイプ作成は既に開始しており、技術的な協力者も探しています。顧客開拓については、PDCで得た繋がりや、高校の先輩が経営するスタートアップなどを通じて進めていく予定です。
時期としては、秋頃にメインシステムを構築し、今年度中には初期ユーザーによるテスト運用を目指しています。また、リサーチマップのような既存の研究者情報を活用し、論文情報などから共同研究の可能性を探るアプローチも計画しています。これは博士学生だけでなく、研究室単位でのマッチングも視野に入れています。
本記事は【前半】となります
後半の記事はこちら