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「研究って、めちゃくちゃ面白いんですよ」
浜松医科大学でAIと生命科学の融合領域を研究する松田和己(まつだ かずみ)氏。彼が起業家輩出プログラム「Passion Driven Changers(PDC)」で見出したのは、自身の内なる情熱を社会を変える力にする道筋だった。
「仲間が欲しい」という純粋な想いを原点に、日本の研究開発の未来を塗り替える壮大な構想を抱く彼の言葉に、耳を傾けてほしい。
■なぜ、その事業をやりたいのですか?
この事業をやりたいと思った根源的な動機は、非常にシンプルで、「仲間を増やしたい」という思いです。子供の頃から変わらないのですが、楽しいこと、面白いことを誰かと共有したいという気持ちが強くあります。
私にとって研究は「面白いとしか言いようがない」ものであり 、目に見えないものが解析によって見えるようになる興奮や、好きなことに没頭できる喜びは、何物にも代えがたいものです。しかし、この面白さを熱く語っても、共感してくれる人は残念ながら多くはありません。世の中の8割、9割の人にはなかなか伝わらないかもしれない。でも、残りの1割か2割くらいは、「研究って本当に面白いよね」「学ぶことや本を読むことが、お酒を飲んだり麻雀をしたりするより楽しいよね」と共感してくれる人がいるはずなんです。
そうした仲間たちが、現実的な制約などから自分の「好き」を追求しきれていない現状があるのではないか、と感じています。それが私にとっては少し寂しい。彼らと一緒に、知的な興奮を分かち合いながら何かを生み出せる場を作りたい。それが、この事業を始める大きな原動力です。
■今の価値観に繋がる原体験は何ですか?
今の私の性格や価値観に繋がる原体験を振り返ると、いくつかの重要な転機がありました。
子供の頃の私は、正直に言うと「めんどくさい子供」だったと思います。生意気で、先生とも仲が悪く、ある意味で嫌われ者だったかもしれません。
そんな私が変わる大きなきっかけは、進学校である中学・高校での経験です。そこには、全国模試で1位を取るような人や、数学オリンピックで世界レベルで活躍するような、まさに「空を飛んでいる」ような才能を持つ同級生たちが大勢いました。彼らを目の当たりにして、「自分は普通なんだ」と痛感し、それまでの尖った部分が少しずつ丸くなっていきました。
その頃から大切にしている考え方が、「ロマンチックに考えてリアルに行動する」ということです。夢や理想は大きく持ちつつも、行動は現実的に、着実に積み重ねていく。ロマンチックなことばかり考えて行動も非現実的だと、社会的な実現は難しいでしょう。逆に、リアルなことだけを考えてリアルに行動するだけでは、夢がなく面白みに欠けてしまう。このバランスが重要だと考えています。PDCのプログラムで、原体験を壮大に捉えつつも、仮説検証を重ねてロジカルに行動していくというプロセスは、まさにこの考え方と合致するものでした。
私の「ロマンチックな思考」の源泉を辿ると、母親の影響が大きいかもしれません。父が非常にリアリストで、「一円にもならないことは意味がない」という考えを持つ人だったのに対し 、母はロマンチストでした。また、幼い頃から本を読むのが好きで、哲学書なども好んで読みました。目に見えない世界、触れられない概念に触れることに強い魅力を感じ、それが抽象と具体を行き来する思考を好む現在の私に繋がっているのだと思います。
そして、「行動力」の源泉としては、やはり「楽しいことをしたい」というシンプルな欲求と、父の現実的な教えからくる「成果に繋げなければ意味がない」という意識が共存している点が挙げられます。
■事業を通じて、どんなビジョンを実現したいですか?
私がこの事業を通じて最終的に実現したいビジョンは、「誰もが好きなことをして生きていける世界」です。
現状、多くの人々が、仕事において必ずしも自分の「好き」を追求できているわけではないと感じています。「ワークライフバランス」という言葉がよく使われますが、究極的には仕事と遊びが一体化し、好きなことに没頭することがそのまま生きがいとなり、社会への価値提供にも繋がるような状態が理想です。
私の事業が、まずは博士人材という高い専門性を持つ人々が、その知的好奇心や探求心を最大限に活かせる場を見つける一助となり、ひいては多くの人々が「好き」を仕事にし、それをライフワークとして輝けるような社会の実現に貢献できれば、これ以上の喜びはありません。
■事業を加速させるために、どんなモノやヒトが必要ですか?
事業を加速させるために必要なものとして、率直に言えば「お金」は重要です。イノベーションを加速するためには、資金的なリソースが不可欠であることは否定できません 。
しかし、それ以上に重要だと考えているのは、「私の考えに共感してくれる人」です。
お金やリソースだけでなく、「好きなことを追求できる社会って素晴らしいよね」と心から思ってくれる仲間と一緒に事業を進めていきたいです。
具体的に協業したい企業としては、AI関連企業のようなテクノロジー企業が挙げられます。彼らが持つリソースや技術力を活用できれば、やれることの幅は格段に広がるはずです。日本にはまだビッグテックと呼べる企業が少ない現状がありますが、そうした存在を目指している企業や、テクノロジーで社会を大きく変えようとしている企業と共に、新しい価値を創造していきたいです。
私と組むことの面白さとしては、人によっては非常に楽しい時間を提供できるのではないかと思っています。私自身、幅広い分野に興味があり、様々な知識や視点を持っています。夢を語るだけでなく、医療分野やインフォマティクスの分野における人的リソースや、これから成長していくであろうポテンシャルも持っていると自負しています。
体力とやる気、「馬力」には自信があります。