秋田県を拠点に、深刻化する獣害問題にテクノロジーで挑む株式会社BearBellの服部悠大氏。自身の命の危険を感じた体験と、14歳の時からの原体験を掛け合わせ、人間と動物が共生する社会を目指している。アクセラレータープログラム「Passion Driven Changers(PDC)」での内省を通じて、彼が掴んだ確固たるMVVと、世界を見据えた事業構想に迫る。
BearBell代表 / 国際教養大学国際教養学部国際教養学科 服部 悠大(はっとり ゆうた)
■Mission / Vision / Value
- Mission: 人間と動物が共生し、自然が魅力として十分に活用されている社会を作ること
- Vision: 獣害被害を未然に防ぐソフトウェアを提供すること
- Value: 圧倒的な当事者意識 / 体験 / 柔軟な発想力
■自己紹介をお願いします
秋田県の国際教養大学に通う4年生です。東京で育ちましたが、大学進学を機に秋田へ移住しました。中学時代からアプリ開発やイベント開催など、興味を持ったことには即座に行動するタイプです。秋田での生活の中で深刻な「獣害問題」に直面し、2024年10月にBearBellを創業、2026年1月に株式会社化しました。現在は学業と並行して、獣害対策ソリューションの開発に全力を注いでいます。
■なぜPDCに応募しようと思ったのですか?
これまでは東北を中心に活動していましたが、関東・東京圏での獣害対策へのニーズを探りたいと考えたのがきっかけです。また、私たちの事業は公益性が高いため、インパクトスタートアップとしての資金調達や、専門的な知見を持つメンターとの繋がりを求めていました。東京発のプログラムに参加することで視座を高め、多角的なアドバイスを得たいという戦略的な狙いもありました。
■PDCに参加して、自身にどんな変化や成長がありましたか?
「事業の核」が定まったことが最大の収穫です。メンタリングで「誰のために、何のために事業をやるのか?」と徹底的に問われ続けました。そのプロセスを経ることで、自身の内面にある情熱と事業の目的がリンクし、MVV(Mission/Vision/Value)が強固なものになりました。迷いがなくなったことでモチベーションが向上し、それが事業のスピード感にも直結していると感じています。
■現在、どんな事業を考えていますか?
獣害の目撃情報を集約・共有し、被害を未然に防ぐプラットフォームの開発です。 既存の対策は県ごとに情報が分断されており、事後対応が中心でした。そこで私たちは、「トップダウン(行政のオープンデータ)」「ボトムアップ(ユーザーによる投稿)」「オートメーション(AIカメラ等の検知)」という3つの情報収集の柱を統合しました。これにより、情報の網羅性と即時性を高め、二次被害だけでなく一次被害も防ぐソリューションを提供します。
■なぜ、その事業をやりたいのですか?
私自身が秋田で熊に遭遇し、追いかけられるという恐怖体験をしたからです。「自分が死ぬかもしれない」というリアルな死の淵を覗いたことで、これは他人事ではなく「自分たちが解決しなければならない課題だ」という強烈な当事者意識が芽生えました。既存のソリューションでは不十分だと感じたからこそ、自分で作るしかないと決意しました。
■今の価値観に繋がる原体験は何ですか?
中学2年生の頃、ニュージーランドへ移住した時の経験です。地理的に日本と分断され、大好きなゲームの話を共有できる友人がいない孤独ともどかしさを感じていました。 そこで私は諦めず、LINEグループを使って自分でコミュニティを作りました。それが最終的に数千人規模に成長したのです。「自分の悩みは、実は社会の悩みかもしれない」「それを自らの手で解決し、社会実装することは最高に楽しい」。この成功体験が、今の私の「圧倒的な当事者意識」の根源にあります。
■事業を通じて、どんなビジョンを実現したいですか?
まずは秋田から、東北、北海道、そして全国へ展開し、獣害という「ネガティブ」をゼロにします。しかし、そこで終わりではありません。 安全が確保された先には、自然の価値を再定義し、エコツーリズムなどで「ゼロからポジティブ」を生み出す未来を描いています。この技術とモデルは、将来的にアフリカなどの海外へも展開できるポテンシャルを持っています。人間と動物が真に共生できる世界を実現したいです。
■事業を加速させるために、どんなモノやヒトが必要ですか?
スピード感を持って開発を進めるための「資金」が最優先課題です。特に社会的意義に共感してくださるソーシャルインパクト投資家やスポンサーになっていただける方々と繋がりたいです。 また、技術面ではAIやディープテックに詳しいエンジニア、特に実際に手を動かして開発を共にしてくれる学生エンジニアの仲間を求めています。地方行政との連携も不可欠ですので、自治体関係者の方とも協業していきたいです。