「昔から生理やPMSの症状が重く、日常生活に支障をきたしていました。だからこそ、同じように悩んでいる人の課題解決をしたいんです」
そう語るのは、東京科学大学大学院で生命理工学を学ぶ林 奈香(はやし なこ)さん。起業家輩出プログラム「Passion Driven Changers(PDC)」への参加を通じて、自身の経験とそこから生まれた強い想いを「ケアトク」という事業アイデアへと昇華させようとしています。生理による不調を我慢せず、誰もが自分を大切にできる社会を目指す挑戦についてお話しします。
■Mission / Vision / Value
- Mission: 全ての女性が生理による不調を我慢することなく、自分の心身を大切にできる社会を作る。
- Vision: 生理による不調に対して我慢ではなく適切に対策ケアをすることで自分を労る文化が浸透した社会を実現する。
- Value: 女性の我慢をなくすために行動する。
■自己紹介をお願いします
はじめまして、林 奈香(はやし なこ)です。東京科学大学生命理工学院の修士課程1年に在籍しています。
生理やPMSの症状が昔から重かった経験から、セルフケア領域での事業を考えています。
趣味はディズニーで、音楽や映画鑑賞はもちろん、テーマパークにもよく行きます。
■なぜPDCに応募しようと思ったのですか?
PDCに応募する前は、事業アイデア自体はあったんですが、その先の具体的な仮説の立て方や検証の進め方、どうやってサービスを構築すればいいのか、具体的に何をすればいいのか分からない状況でした。アクセラレーションプログラムに参加してみたいと思っていた時に、CroMen吉川さんと学内のイベントでお会いして、PDCを紹介していただきました。
PDCの内容を見て、約3ヶ月という長期にわたって体験の振り返りから事業アイデアのブラッシュアップまで、総合的に支援していただける形であることに魅力を感じて応募を決めました。
■PDCに参加して、自身にどんな変化や成長がありましたか?
一番大きな成長だと感じているのは、原体験をしっかり振り返りながら、自分が本当にやりたい課題解決が何なのかを多角的に考え、事業アイデアにまで落とし込めたことです。
また、仮説検証の方法やその重要性を改めて理解できたのも大きいです。以前は自分の直感や経験だけでアイデアを考えていたのですが、PDCでインタビューやアンケート調査を行うことで視野を広げながら課題を認識できましたし、フィードバックを受けて修正を繰り返すことで、顧客のニーズに寄り添ったアイデアにブラッシュアップできたと感じています。
■現在、どんな事業を考えていますか?
LINEを活用したチャット形式で、生理周期や体調、気分、現在地に合わせたクーポンやセルフケア情報を提供するサービス「ケアトク」を構想しています。例えば、外出時に生理痛が辛い時に使えるカフェでのホットドリンク1杯無料や、家でゆっくり過ごしたい時に使えるフードデリバリーの割引など、心身が楽になったり症状の緩和に繋がるようなクーポンや情報を提供したいと考えています。
ターゲット層としては、最初は女子大学生をメインに考えています。特に症状の痛みが強いと言われる20代で、かつセルフケアをしたいけれど金銭的に難しいという学生の声が多くあったので、まずはそこからアプローチしていきたいです。将来的には、20代から30代の独身で一人暮らしをしている女性などにも広げていきたいと思っています。
■なぜ、その事業をやりたいのですか?
私自身、昔から生理やPMSが重い方で、鎮痛剤が効かずに寝込んだり、生理痛を我慢して学校やバイトに行ったりという経験がありました。ケアが大事だと知っていても、面倒だったりお金がかかったりという理由で、鎮痛剤を飲むくらいしかできていませんでした。
生理に関する事業アイデアを考える中で、不調を抱える女性の約6割が何もケアをしていないという事実に問題意識を持ちました。自身の経験からもケアの重要性を再認識し、積極的に休んだり、生活習慣を見直したり、ピルを服用したりすることで、症状の悪化やストレスが軽減されることを実感しました。だからこそ、女性が生理の不調を我慢せずに、積極的に自分の心身をいたわることを推奨し、その行動に結びつける仕組みを構築したいと思ったんです。
また、元々起業というものに興味がありました。0から自分のアイデアを考えて作り込み、それを社会に実装するプロセスを自分の手でやってみたいという思いがありました。その上で、自分の原体験を振り返った時、「生理」というテーマが自分の中で非常に大きな課題であり、周りの友人や家族も同様に悩んでいること、そしてこの課題が見過ごされているように感じたことが、この事業を考える大きなきっかけです。見過ごされるのが自分としてはすごく嫌なので、自分で行動を起こして生理に対する価値観や社会の理解、サポートを変えていきたいと思っています。
■今の価値観に繋がる原体験は何ですか?
そうですね…まず、なぜ起業に興味を持ったかというと、高専の5年生、大学2年生くらいの時に、奨学金制度を通じて未来創造機構という東工大のスタートアップやベンチャーに投資をしているVCの方々とお話しする機会があり、そこでスタートアップの魅力に触れたのが大きいです。
高専を選んだのも、少し遡りますが、小中学校の頃から理科、特に化学系の実験が好きだったからです。将来は薬や化粧品の開発者になりたいと考えていて、いとこが高専に通っていたこともあり、専門的に学べる高専の化学系の学科に進学しました。
性格的なことで言うと、小中学生の頃は基本的に真面目で、生徒会活動などにも積極的に参加するリーダータイプでした。でも、家ではだらだらしていたり、親に怒られたりすることもあって、学校では「いい子ちゃん」を演じていたけど、家ではオフモード、みたいな感じでしたね(笑)。
■事業を通じて、どんなビジョンを実現したいですか?
まずは、女性自身が自分の健康に積極的に向き合い、生理期間をただ辛い時間と捉えるのではなく、「自分を大切にする時間」として捉えられるような社会にしていきたいです。
そして、企業やお店、自治体などが生理への理解とサポートを当たり前にできるような環境を作り、生理に起因する女性の負担がなくなるような社会を目指したいと思っています。社会全体がもっと寄り添い、知ること、そしてサポートすることが大切だと考えています。例えば、「ケアトク」を通じて企業からクーポンを提供していただくことで、お店やサービスがより女性に優しいものになり、そういった社会の実現に繋がればと思っています。
■事業を加速させるために、どんなモノやヒトが必要ですか?
今のフェーズでは、MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)を作成し、実際にターゲットとなる女性に使ってもらって仮説検証を行いたいと考えています。そのためには、MVPを作成できるエンジニアや開発者の方、そしてクーポンの発行に協力してくださるお店や企業との繋がりが必要です。
将来的には、全国展開しているドラッグストアやコンビニ、カフェ、飲食店、フェムテック関連の企業などと連携できればと考えていますが、最初のMVPや仮説検証の段階では、エリアを絞って、例えば女子学生が多い大学周辺のエリアや、大学とお店が集まっている都心部(お茶の水や神田など)で、女性がよく利用する個人経営の飲食店やカフェなど、女性をサポートしたいと考えてくださる企業や店舗と連携していきたいです。