東日本大震災から15年近くが経過しようとする今、被災地以外の地域や震災後に生まれた世代において「記憶の風化」は深刻な課題となっています。
徹底した「内省」を通じて原体験を事業へ昇華させるこのプログラムに参加する宇野澤茜さんは、自らの被災体験を原点に、デジタル技術と空間芸術を融合させた新たな「伝承」の形に挑んでいます。
IT企業 宇野澤 茜(うのさわ あかね)
■Mission / Vision / Value
- Mission:「記憶の風化」と「伝承の途絶」を解決し、被災者の声を未来へ繋げる。
- Vision:震災を他人事ではなく「自分事」として捉え、次に備えられる社会を創る。
- Value:五感を通じた「没入型体験」、環境芸術と教育の融合、自治体との連携による常設化。
■自己紹介をお願いします
宮城県で東日本大震災を経験しました。大学院修了後、現在はIT企業で働きながら、これまでの学生団体での経験と自身のバックグラウンドを掛け合わせ、震災伝承をアップデートするための事業開発に取り組んでいます。学生時代から、オンラインを通じて震災の体験を伝える活動を続けてきました。
■なぜPDCに応募しようと思ったのですか?
自分の内側にある抽象的な「やりたいこと」を、確固たる事業へと昇華させたかったからです。特に「内省」を通じてMVVを徹底的に言語化し、一貫性のある事業設計を行うというPDCの思想に惹かれました。東京都の「TOKYO SUTEAM」採択プログラムという信頼性もあり、本気で情熱を形にしたいと考え応募しました。
■PDCに参加して、自身にどんな変化や成長がありましたか?
「震災伝承」という、ビジネス化が難しい分野ゆえの不安がありましたが、メンタリングを通じて「君の視点には独自性がある」と背中を押され、強い自信を持てました。単なる情熱だけでなく、事業計画の精度やロードマップの描き方など、プロとしての視点を得られたことが最大の収穫です。
■現在、どんな事業を考えていますか?
学校や自治体向けに、被災体験を可視化した「没入型展示」と「教育プログラム」を統合して提供します。最大の特徴は、文字を追うだけでなく、風や音、匂いなどを駆使した「インスタレーション(空間芸術)」を用いる点です。4DXのような体験にすることで、お子さんや外国人、障がいを持つ方々など、あらゆる人々が直感的に「あの時」を理解できる環境を作ります。
■なぜ、その事業をやりたいのですか?
語り部の方々の高齢化が進み、このままでは大切な記憶が消えてしまうという強い危機感があるからです。私には、あの時の声を未来に繋げる責任があります。寄付に依存せず、持続可能な事業として震災伝承を社会に定着させたい。それが私の情熱の源泉です。
■今の価値観に繋がる原体験は何ですか?
大学進学で上京した際、周囲との「温度差」に直面したことです。私にとってある意味人生を変えた震災が、友人にとっては「過去の歴史」になりつつあった。教科書的な知識だけでは他人事で終わってしまう。「誰でも当事者になり得る」という真実を伝えるためには、心に深く入り込む、新しい伝え方が必要だと痛感したのです。
■事業を通じて、どんなビジョンを実現したいですか?
震災の記憶が一時的な事象ではなく、社会のインフラとして「常設・循環」している世界です。日常的にアクセスできる「体験型の記憶装置」があり、そこでの体験が家族との会話や具体的な備えに繋がっていく。将来的にはこの技術を、あらゆる個人の体験を社会の学びに変えるプラットフォームへ広げたいと考えています。
■事業を加速させるために、どんなモノやヒトが必要ですか?
まずは実証実験を行うための「施設」と、防災教育に課題を持つ「自治体・企業のパートナー」が必要です。また、事業モデルを磨き上げるための専門知識や資金的支援も求めています。「震災伝承」を日本が誇れる「文化」へと昇華させるために、ぜひお力を貸してください。