急速に変化する現代社会において、大学生のキャリア形成支援は重要性を増しています。技術革新やグローバル化により、従来の職業観や働き方が大きく変容する中、学生たちは自身の将来を見据えたキャリアビジョンの構築に困難を感じています。同時に、企業側も変化に適応できる柔軟な思考と強い主体性を持つ人材を求めています。
このような社会背景のもと、2019年から現在に至るまで、近畿大学アカデミックシアター様は株式会社CroMenと連携し、「Cross Mentorship in 近大」というキャリア形成支援プログラムを継続して実施しています。このプログラムは、従来の就職支援やキャリアガイダンスとは異なるアプローチを取り、学生一人ひとりの内面に深く寄り添いながら、自己理解と主体的なキャリア設計を促進することを目指しています。
プログラムでは多様な社会人メンターとの対話や継続的なフォローアップを通して、学生たちに具体的なロールモデルと実社会とのつながりを提供し、より現実的で実現可能なキャリアビジョンの構築を支援しています。
本記事では、「Cross Mentorship in 近大」プログラムの詳細な内容、実施方法、そしてこれまでの成果について紹介します。大学教育における新たなキャリア支援の形として、このプログラムが他の教育機関や企業にとっても参考になれば幸いです。
プログラムの背景と課題
近年、大学教育において学生のキャリア形成支援の重要性が高まっています。しかし、多くの大学が直面している課題の一つに、限られたリソースの中で個々の学生のニーズに応じたきめ細かな指導を行うことの難しさがあります。
近畿大学アカデミックシアターには「学生一人ひとりが自身のビジョンに根ざしたキャリアを築いて欲しい」という思いがありました。この思いを実現するため、CroMenの「自分は何に情熱を傾けたいのか」を様々なキャリア・世代の人たちと考え続けたノウハウを活かし、「Cross Mentorship in 近大」プログラムが開発されました。
プログラムの概要
「Cross Mentorship in 近大」は、年2回実施される2Daysプログラムを中心に構成されています。このプログラムは、学生の自己理解を深め、キャリアビジョンを明確化することを目的として、以下の3つのコンテンツを提供しています:
- Day1:内省ワークと1on1セッション
- Day2:多様な社会人との対話と1on1セッション
- Day外メンタリング:チューターによる継続的なサポート
プログラムの具体的な取り組み
1. Day1
Day1では、CroMen別プログラムOBOGとのオンライン1on1セッションを通じて、学生の内面に深く迫る内省ワークを行います。このワークの特徴は以下の通りです:
- 学生の原体験を深掘り
- 自分のやりたいことを言語化するサポート
- 経験を「事実」「当時感じたこと」「今の自分への影響」に分けて整理
- 整理した結果を他の参加者と共有し、新たな視点からの気づきを獲得
2. Day2
Day2では、起業家や大手企業の若手社員など、幅広い分野で活躍する社会人メンターを招待し、対面での1on1セッションを行います。この対話の特徴は以下の通りです:
- 具体的なロールモデルとの出会いの場を提供
- 社会人の視点によるフィードバックを通じて、学生の考え方を深化
- 多様な価値観や経験に触れる機会の提供
3. Day外メンタリング
プログラム運営や原体験の深堀りに慣れたチューターが、3回にわたって1on1セッションを実施します。これらのセッションは以下のタイミングで行われます:
- Day1前:プログラムへの期待や不安の共有、目標設定
- Day1~2:Day1での気づきの深堀り、Day2への準備
- Day2後:プログラム全体の振り返り、今後のアクションプランの策定
これらのセッションを通じて、学生は以下のような効果を得ることができます:
- 継続的な自己理解の促進
- プログラムで得た気づきの定着と深化
- 具体的なキャリアビジョンの形成とアクションプランの策定
- 自信の向上と行動への動機付け
プログラムの成果と参加者の反応
プログラムに参加した学生からは、肯定的な反応が得られています。具体的には以下のような成果が見られました:
自己理解の深化: 「私の軸となるものが見つかった。人が皆平等に心地よく過ごせる環境を作りたいというのが私のやりたいことだと気付いた。」
キャリアビジョンの明確化: 「研究職と狭めるのでは無く、研究がしたいなら他業種でも出来ることに気がつきました。お客さんに直接届けることでニーズに応え、開発者の熱意も伝えられるような職業にも興味があると感じました。」
行動力の向上: 「まずは自分の興味ある分野にある程度の時間を注ぎながら、最よく学んでみたいと思える分野にさらに時間を投資する。一見すると遠回りしているように思うかもしれないが、明確なゴールがない以上それが見つかるまで広く浅く色々なことに挑戦するのもアリなのではと感じた。」
自信の獲得: 「そもそも自分の夢について人に話すことが少し苦手、でも話せるくらい自信が持てるようになった。」
まとめ
「Cross Mentorship in 近大」は、大学教育における外部連携の可能性を示す取り組みの一つとなります。このプログラムでは、きめ細かな個別支援と実践的な学びの機会を提供し、学生のキャリア形成を支援しています。
内省ワークを通じた自己理解の深化、多様な社会人メンターとの交流による視野の拡大、そして継続的なチューターサポートにより、学生たちは自身のキャリアを主体的に考え、設計する力を養うことができています。
今後、こうした産学連携モデルが広がることで、日本の大学教育全体のキャリア支援の質が向上する可能性があります。
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